皮膚科が扱う主な疾患
皮膚は全身を覆う重要な臓器
頭皮から足先に至るまで、皮膚科が扱う病気は広範囲に及び、とてもたくさんの種類が存在します。皮膚は外部のさまざまな刺激やストレスに対して、バリアー機能を備えた鎧のような役割を果たします。
皮膚は気候や環境などに影響を受けるだけでなく、アレルギーや免疫の異常、内臓疾患や、感染症など様々な要因によっても症状が現れてきます。
当院で皮膚の診察をするメリット
当院は主に内科系疾患を中心とした診療を行っておりますが、内臓の病気が皮膚症状として表れることは少なくありません。逆に皮膚症状から、内臓系の病変が見つかることも多いです。内科・皮膚科の双方の観点から診察できる当院は、「病気を診断する」「病気を治療する」という点でメリットがあります。
大人に多い皮膚科疾患
アトピー性皮膚炎
近年、アレルギー性疾患は増加傾向にあります。その中でもアトピー性皮膚炎は、悩まされている患者さんがとても多い疾患です。アトピーの診療についても、病気の理解やその治療法において、さまざまな見解があります。
アトピー性皮膚炎は主に、かゆみを伴う湿疹が「良くなったり悪くなったり」を慢性的に繰り返す皮膚疾患です。
症状を起こしやすい体質として
- 肌の乾燥
- 肌のバリア機能の低下
- アレルギー体質
などがあげられます。
そこへ、さらに刺激が加わることで湿疹を誘発します。
大人のアトピー
QOL(生活の質)の低下を防ぐために
大人になってから発症したアトピー性皮膚炎は、激しい痛みとかゆみを伴うことが多くあります。
- かゆみが強くて痛い
- かゆくて眠れない
- コンプレックスになっている
など、以上のような状態が続くことで心身のストレスを増発させ、アトピー症状の悪化へとつながります。まさに悪循環のループです。
その結果、患者さんのQOL(生活の質)は著しく低下してしまいます。
当院では、アトピー性皮膚炎に対する薬物療法や、かゆみや炎症を抑える適切な治療を行っております。また、症状悪化や再発を防ぐためのスキンケアの指導もさせて頂きます。薬物療法を半年以上行っても症状が改善しない場合は、地域の病院などと連携を図り、症状改善へつとめます。
蕁麻疹(じんましん)
蕁麻疹は、蚊に刺されたときのように、皮膚の一部が盛り上がり、かゆみを伴う症状が出ます。
- 円形・楕円形状のもの
- 地図模様のような形状のもの
など、さまざまな大きさや形の蕁麻疹があります。
チクチクと刺さるような痛みや、熱をもっているような痛みが出ることもあります。また、掻くとみみず腫れができます。
赤く盛り上がった膨疹は数時間で消失するものもありますが、別の箇所に膨疹があらわれたり、範囲が広がったりと、場所や形を変えながら症状が繰り返される事が多いです。
湿疹との違い
湿疹と蕁麻疹は、どちらもかゆい発疹ですが、外見と症状の続く時間に違いがあります。湿疹は、皮膚の表面がガサガサになったり、赤いぽつぽつや水疱がでたりします。また、症状は多くの場合1日以上続きます。
一方で、蕁麻疹の場合は、蚊に刺された時のように皮膚が赤く盛り上がります。一つ一つの盛り上がりは、湿疹と異なり数時間で消えたり、また出たりを繰り返します。新しい盛り上がりが別の場所にでてくることもあります。
湿疹が治った後は色素沈着になることがありますが、蕁麻疹は色素沈着など痕が残ったりすることはありません。
蕁麻疹の診断と治療
まずは問診からはじめ、原因物質の特定を行います。必要に応じて血液検査やアレルギー検査を行い、蕁麻疹発生の要因を洗い出します。
このような症状のある方は、ご相談下さい。
- 強い痛みや痒みがある
- 広範囲な膨疹がある
- 症状が繰り返される、長引いている
- 唇やまぶたの腫れ、呼吸困難の症状がある
明確に原因がわからなくとも、蕁麻疹を誘発していそうな生活習慣を見直すだけで、未然に防ぐことができます。
ニキビ
大人のニキビ
思春期を過ぎて出てくるニキビ(成人に多いニキビ)は、
- 生活習慣の乱れ
- ストレスなどホルモンバランスの乱れ
- 化粧品などの外部刺激
など、さまざまな原因がニキビ発症のリスク因子として考えられます。
薬剤など、対症療法で症状を改善できる場合もありますが、ニキビの根本的な原因を明覚にし、生活習慣の見直しがとても大切になります。
思春期ニキビ
10代に多い思春期ニキビの原因は、成長期における皮脂の過剰分泌が考えられます。ホルモンバランスの変化とともに、皮脂の分泌量が増えるため、毛穴に皮脂が詰まりやすくなり、そのため、赤ニキビの原因のアクネ菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
思春期の子は「ニキビ」に対して敏感になり
- 顔を見られるのが恥ずかしい
- 自分に自信が持てない
- 再発するニキビにイライラする
- 肌荒れに気分が落ち込む
など、身体だけではなく、気持ちの面でも大きく関わってきます。
しかし、家族からは「心配はいらない」と深刻な問題として捉えない場合も少なくありません。ここで、お子さんと認識のズレが生じてしまいます。思春期の子にとって「ニキビ」はデリケートな悩みでもあり、積極的に相談をするのはハードルが高いのです。お子さんのサインを見逃さないよう注意して見てあげて下さい。
マスク・アルコール消毒による肌トラブル
こんなお悩みありませんか?
- マスクをすると、顔がかゆくて荒れる
- マスクで、かゆみやかぶれが治りにくい
- アルコール消毒で、手がかぶれた
- 手洗いで手が乾燥し、ガサガサする
新型コロナウイルスの影響で、マスクの着用や、感染予防のための手洗い・アルコール消毒をする機会が急増しました。
その影響から皮膚科では
- かゆみ
- かぶれ
- 赤み
- 乾燥
など、お肌のトラブルでご来院される方も増加しています。
アルコールによる手荒れ
新型コロナウイルス感染症対策の一環として推奨されている
- こまめな手洗い
- 手のアルコール消毒
は、手荒れを誘発するリスク因子です。
皮膚の表面は皮脂でコーディングをされています。この皮脂は皮膚を外部の刺激から守る「バリア機能」を担っていまが、手洗いやアルコール消毒によりバリア機能が低下し、手荒れ・肌荒れを引き起こしてしまいます。
アルコール消毒でダメージをおった肌に、またアルコール消毒を繰り返し使用することで、お肌はアルコールによる刺激を受け、かぶれ・かゆみ・赤みといった症状が出やすくなります。これは、皮膚の表皮が炎症を起こしている状態で「湿疹」といいます。
適切な治療が必要な場合もありますのでご相談ください。
できもの(皮下腫瘤)
円錐状の赤いできものが顔などの表面にできる「おでき」などの疾患は、症状を放置すると痛みや熱感を伴うことがあります。
悪化すると静脈炎や髄膜炎を発症することもありますが、抗生物質での治療が普及してきたため、重症化するケースは減少しました。
できものの治療
できものに膿が溜まっていたり、おできが複数密集している場合は、膿を排出させる手術が検討されます。
排出後は炎症が見られる場合もありますが、時間の経過とともに治りますのでご安心ください。
水虫・爪水虫
水虫の正体と原因
水虫は白癬菌と呼ばれるカビの一種が皮膚に繁殖して生じる病気です。白癬菌は、手やからだの皮膚の角質層に寄生しますが、9割近くが足に感染します。高温多湿な靴の中や靴下は、菌にとっては過ごしやすい環境のため、1日中靴を履いている環境にいる働く男性・女性ともに、水虫に悩む方が増加しています。靴がむれた状態になっていると要注意です。
白癬菌とは
白癬菌はカビの一種で、人の髪、爪、角質などに含まれるケラチンとよばれるタンパク質を主な栄養としています。白癬菌の菌種は30種類以上もあり、水虫を発症させるのは「ヒト好性菌」でヒトからヒトへとうつります。
感染のメカニズム
水虫に感染している人の皮膚からはがれ落ちた角質を素足で触れることで感染します。触れてしまったからといってすぐに感染するわけではなく、洗い流されず残ったままの菌が角質へ侵入し、高温多湿など繁殖しやすい環境にあると感染してしまいます。
水虫が感染しやすい環境
白癬菌は、高温多湿(靴下、靴の中など)、アルカリ性の皮膚(汗、汚れ)を好みます。しっかりと汗や汚れを洗い流し、清潔に保つことで水虫の感染予防につながります。
白癬菌が好む環境チェック
当てはまる項目が多い方は要注意です。
- 仕事などで毎日、長時間靴を履いている
- いつも足がむれている
- 足のケアを怠っている
- 汗をかきやすい(脂性である)
- 糖尿病など持病で免疫力が低下している
お子さんに多い皮膚科疾患
気になる症状は早めにご相談ください
子供の皮膚は成長過程にあるため、大人に比べてかかりやすい疾患や小児特有の症状があります。
発育段階に応じて表れる皮膚症状は、症状の出方も人それぞれで個人差が大きく、生活環境も受けやすい特徴があります。
また、大人と違って小さな子どもは、自分の症状をうまく言葉で伝えることが難しいです。ご家族の方が気付く頃には状態が悪化していることも少なくないため、違和感を覚えたら早めに受診させるように心がけましょう。
子供の皮膚の特徴
子供のお肌はみずみずしく、ハリがあるのが特徴です。皮膚の表皮は複数の層で構成されており、一番外側が角質層とよばれています。大人よりも子供の角質層は薄く、約半分から3分の1程度の厚みしかありません。
角質層の役割
角質層は、私たちの体を外部の刺激から守ってくれる「バリア機能」を担っています。しかし、角質層を守っている皮脂の分泌が、生後まもなくから思春期を迎えるまでは非常に少なく、外部からの刺激を受けやすくなるため、小児期は皮膚のトラブルが発症しやすいのです。
ご相談の多い症状
アトピー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎は、アレルギー性の炎症により発症する湿疹で、その代表的な疾患が「アトピー性皮膚炎」です。かゆみを伴う湿疹が、慢性的に繰り返されます。
小児期に発症しやすく、幼少期では全身の広範囲で皮膚が炎症を起こすことがあります。
アトピー性皮膚炎の原因
乾燥肌や、皮膚のバリア機能に異常がある場合に皮膚炎が起こる場合があります。また、遺伝的な要因も特徴です。
気管支喘息を患っている子供の約半数がアトピー性皮膚炎にかかっている(既往歴がある)ということがわかっています。
アトピー性皮膚炎を対処することで、喘息の悪化予防につながります。
アトピー性皮膚炎の治療
かゆみや炎症を抑える治療を行います。
- ステロイド薬
- 抗アレルギー剤
- 保湿薬
などを検討します。
治療以外にも、日常生活での予防も重要となります。
清潔な衣服を身に着ける、お肌への刺激や乾燥を避ける、スキンケアなどの徹底など、些細な習慣がアトピー症状の軽減につながります。
とびひ
とびひとは、あせもや、虫刺されなどの傷の部分に細菌が入りこみ、二次感染を起こした状態です。とびひの特徴としては、水ぶくれのような状態でかゆみを伴います。皮膚をかきすぎて、周りの皮膚へ細菌が広がりやすくなりますので注意が必要です。
とびひの治療
とびひは、患部を優しく洗い清潔に保つことが大切です。症状をみながら、抗菌剤や抗生物質などを処方いたします。かゆみの症状がひどい場合、お子さんが無理に掻きむしってしまわないように、抗ヒスタミン剤も検討します。
水イボ
水イボとは、伝染性軟属腫ウイルスによる感染で発症する皮膚疾患で、皮膚のバリア機能が低下していると感染しやすいとされています。
アトピー性皮膚炎や、乾燥肌のお子さんの場合は感染のリスクが高いので注意が必要です。また、プールの水を介して感染はしませんが、ビート板や浮き輪、タオルなどの共有物を介して感染することがあります。
イボを無理に掻きむしったりすると、ウイルスを周りの皮膚へ撒き散らし、広範囲へ広がる可能性がありますので注意が必要です。
水イボの治療
水イボは、免疫力がついてくると自然に治癒していきます。ただし自然治癒には1年程度かかるため、治療が必要な場合は、専用の器具で水イボを取り除きます。痛みが伴うことがあるため、治療の際は麻酔テープなどを使用し処置を行います。
学校保健安全法では、予防法および学校における対応として、「多数の発疹があるものについては、水泳、プールでのビート板や浮き輪の共有をしない」と表記されていますが、プールへの参加や登園・登校そのものに規制はされていません。
水ぼうそう(水痘)
水ぼうそうとは、水痘帯状疱疹ウイルスの感染により発症する病気です。感染力がとても強い特徴があります。軽い頭痛、発熱からはじまり、1日ほどで顔や体幹に赤い発疹があらわれます。次第に強いかゆみや発熱をともないます。発疹は全身へ広がり、水ぶくれの状態となり、最終的に「かさぶた」になります。
水ぼうそうは感染力がとても強いですが、症状が重症化するケースはほとんどなく、怖い病気ではありません。しかし、免疫力が低下していたり、アトピーを患っている子供の中には、稀に重症化するケースもあります。
学校保健安全法で指定されている感染症
水ぼうそうは強い感染力があるため、水疱が全て「かさぶた」になるまでは、登校・登園することができません。
水ぼうそうを疑う症状がある場合は、早めにご相談下さい。
※ 現在「水痘ワクチン」は定期予防接種に含まれています。
乳児脂漏性(しろうせい)湿疹
脂漏性湿疹とは、顔や頭皮に発症する皮膚炎です。かさぶたのようなかさかさができたり、赤みがあったり、発疹があらわれることもあります。発疹が体まで広がっていたり、症状が悪化していると感じたら早めにご来院下さい。
乳児脂漏性湿疹の特徴
生後半年の間に多く見られ、2歳をすぎると自然に治癒していきます。かゆみもなく、痕が残る心配もありません。
乳児脂漏性湿疹の原因
明覚な原因はわかっていませんが、過多な皮脂分泌が関係していると考えられています。
そのため、清潔なお肌を保つために適切なスキンケアが効果的です。
乳児の場合は、赤ちゃん専用の石けんやシャンプーなどのスキンケア剤を使用すると効果的です。